夏の照りつける太陽、西日の眩しさ、そしてコンクリートの照り返し。現場仕事において、強烈な日差しは体力を奪うだけでなく、事故のリスクも高めます。
「サングラスをかけたいけれど、上司や元請けに『遊びに来てるのか』と怒られないか心配…」
そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか? 実は、現場で使うべきはファッション用のサングラスではなく、「サングラスに見える保護メガネ(セーフティグラス)」です。これなら安全基準を満たした「保護具」として、堂々と着用できます。
この記事では、過酷な現場環境で働いてきた筆者が、「上司に怒られない」「傷や曇りに強い」「カッコいい」の3条件を満たした、現場用アイウェアのおすすめを厳選してご紹介します。
現場仕事で「普通のサングラス」がNGな理由

「見た目が同じなら、コンビニや雑貨屋で売っている1,000円のサングラスでもいいじゃないか」
そう思うかもしれませんが、現場仕事において普通のファッション用サングラスを使うことは、自分自身の身を危険にさらす行為です。また、周囲からの信用を失う原因にもなりかねません。
プロとして現場に立つ以上、知っておくべき「3つの決定的な違い」があります。
1. 「割れ方」が違う(失明のリスク)

これが最大の理由です。 一般的なサングラスのレンズは、アクリルやガラスで作られています。これらは強い衝撃が加わると粉々に砕け散ります。
もし、グラインダーの火花、切断した破片、あるいは弾かれた小石が顔に飛んできたらどうなるでしょうか? 普通のサングラスでは、砕けたレンズの鋭利な破片が眼球に刺さり、最悪の場合、失明する恐れがあります。
一方で、現場用の「保護メガネ」は、主にポリカーボネートという素材で作られています。これは機動隊の盾や防弾ガラスにも使われる素材で、ハンマーで叩いても割れません。衝撃を受けても「砕ける」のではなく「受け止める」ため、物理的に目を守ることができるのです。
2. 「視界の歪み」による転倒リスク

安価なファッションサングラスは、レンズの湾曲部分で視界が歪んでいることが多いです。 街中を歩くだけなら気になりませんが、足場の悪い現場では致命的です。
- 距離感が狂って、足場の単管につまずく
- 深さが分からず、穴や段差を踏み外す
- 長時間かけていると、頭痛やひどい眼精疲労に襲われる
現場では一瞬の判断ミスが怪我につながります。「歪みのないクリアな視界」は、安全帯と同じくらい重要な命綱なのです。
3. 「遊び」と誤解される(マナーの問題)

現場におけるサングラス着用が嫌がられる一番の理由は、「カッコつけている」「遊びに来ている」と思われるからです。
しかし、着用しているのが「ANSI規格(米国安全基準)」や「JIS規格」をクリアした「保護具(セーフティグラス)」であれば、話は変わります。
- 普通のサングラス = ファッション(嗜好品)
- 保護メガネ = 安全装備(必需品)
もし上司や元請けに何か言われたとしても、「これは安全規格を通った保護メガネで、紫外線や飛来物から目を守るための装備です」と堂々と説明ができます。 プロは道具にこだわります。自分の目を守る正当な理由を持つためにも、規格品を選ぶことが重要です。
失敗しない現場用サングラス(保護メガネ)の選び方 3つの基準

現場用のアイウェアは、星の数ほど種類があります。しかし、デザインだけで選ぶと「暗くて見えない」「すぐに曇って使い物にならない」という失敗をしがちです。
現場で確実に使える「相棒」を見つけるために、チェックすべきポイントはたったの3つです。
1. 「ANSI Z87.1」または「JIS」の刻印があるか

まず一番最初に確認してほしいのが、パッケージやテンプル(つる)の内側にある安全規格のマークです。
- ANSI Z87.1(アンシ): アメリカの国家規格。「至近距離から散弾銃の弾を撃っても貫通しない」ほどの極めて高い耐衝撃性能を求められます。世界中の現場で採用されている信頼の証です。
- JIS T 8147: 日本の国家規格。一定以上の強度と光学性能が保証されています。
Amazonなどで「現場用 サングラス」と検索すると怪しい商品も出てきますが、この「ANSI Z87.1(またはZ87+)」という記載がないものは、現場ではただのおもちゃです。必ずこの規格をクリアしたものを選んでください。
2. 「防曇(アンチフォグ)コーティング」は強力か

現場仕事において、レンズの「曇り」は最大のストレスであり、事故の元です。 特に夏場に汗をかいている時や、冬場にマスクとネックウォーマーをしている時、湿度の高いマンホールや地下ピット内では、安物のレンズは一瞬で真っ白になります。
曇るたびに作業を中断してメガネを拭くのは、時間の無駄ですし、手袋についた泥や油でレンズを傷つける原因にもなります。
選ぶ際は「防曇(ぼうどん・アンチフォグ)」と明記されているものを選んでください。特に後ほど紹介する『Bolle Safety』などの専門メーカー品は、コーティング技術が凄まじく、熱湯の湯気を当てても曇らないレベルです。
3. 作業環境に合った「レンズの色(可視光線透過率)」

「サングラス=黒」と思い込んでいませんか? 現場の環境によって、選ぶべきレンズの色は変わります。
- スモーク(黒・グレー系):
- 向いている場面: 直射日光下の屋外作業、足場の解体、交通誘導、運転中。
- 注意点: 日陰や屋内に入ると真っ暗で何も見えなくなります。
- クリア(透明) / イエロー:
- 向いている場面: 屋内配線、薄暗い倉庫、夕方・夜間の作業。
- 注意点: 眩しさはカットできません。
- 【いちおし】調光(フォトクロミック):
- 特徴: 「紫外線量に合わせて勝手に色が変わる」レンズです。
- 向いている場面: 屋内と屋外を行き来する現場(下水道、トンネル、建築現場全般)。
- 屋外では「サングラス」に、屋内では「透明メガネ」に自動で変化するため、掛け外しの手間がいりません。少し値段は張りますが、現場仕事においてこれほど便利な機能はありません。
【その他】偏光レンズには注意が必要

釣りやドライブで人気の「偏光(ポラライズド)レンズ」は、乱反射をカットして水面を見やすくする機能があります。 しかし、現場仕事では「スマホや測量機の液晶画面が真っ黒に見えてしまう」というデメリットがあります。図面確認や写真撮影のたびにメガネを外すことになるため、メイン装備としては注意が必要です。
プロが選ぶ!現場仕事におすすめのサングラス(保護メガネ)5選

数ある保護メガネの中から、現場の過酷な環境(粉塵、湿気、明暗差)に耐えられる実力派だけを厳選しました。
すべて「ANSI Z87.1(米国安全規格)」などをクリアした「保護メガネ」ですので、現場でも堂々と使用できます。
1. 【コスパ最強の王道】Bolle Safety(ボレーセーフティ) ラッシュプラス
(参考価格: 1,500円〜2,000円)
「迷ったらまずはコレ」と言える、世界的なベストセラーです。フランスの老舗アイウェアメーカーが作るこの保護メガネは、デザインが非常にスポーティで、現場でかけていても「ダサさ」が一切ありません。
- ここが凄い: 独自技術の「プラチナコーティング」が最強です。マスクをして息を吹きかけても、熱湯の湯気に当てても、魔法のように曇りません。
- おすすめのレンズ色:
- スモーク: 屋外メインの現場におすすめ。
- クリア: 屋内作業や、曇りの日におすすめ。
現場のプロの一言 ホームセンターの安物とはレンズの透明度が違います。1,000円台で買えるので、傷ついたら買い替える「消耗品」としても優秀。私は車用と現場用で複数持っています。
2. 【薄暗い現場の救世主】Bolle Safety ラッシュプラス(トワイライトレンズ)
(参考価格: 1,800円前後)
先ほどのラッシュプラスの「レンズ色違い」ですが、これが現場仕事に革命的に便利なので別枠で紹介します。 「トワイライト(夕暮れ)」という名前の通り、少し茶色がかった薄い色のレンズです。
- ここが凄い: ブルーライトをカットしつつ、コントラストを上げてくれるため、夕方や薄暗い倉庫、雨天時でも視界がくっきり明るく見えます。
- おすすめの現場: 早朝・夜間の作業、トンネル坑口、倉庫作業。
現場のプロの一言 真っ黒なサングラスだと見えにくい、でもクリアレンズだと少し眩しい…そんな「中途半端な明るさ」の時に最高です。下水道の管口付近の作業などでも重宝します。
3. 【明暗差を自動攻略】UVEX(ウベックス) 調光レンズモデル
(参考価格: 8,000円〜10,000円)
ドイツの世界的安全保護具メーカー、UVEXのハイエンドモデルです。最大の特徴は、紫外線量に合わせてレンズの色が自動で変わる「調光(フォトクロミック)機能」です。
- ここが凄い:
- 屋外(紫外線あり): 濃いサングラスになり、眩しさをカット。
- 屋内(紫外線なし): 透明に近いクリアレンズになり、手元が見える。
- おすすめの現場: 建物の中と外を頻繁に行き来する監督業、下水道、トンネル工事。
現場のプロの一言 いちいち掛け外す手間がゼロになります。現場でメガネを外してどこかに置くと、紛失したり踏まれたりするリスクがありますが、これは「ずっと掛けっぱなし」でOK。初期投資は少し高いですが、快適さは段違いです。
4. 【男のロマンと最強の強度】OAKLEY(オークリー) Industrial M Frame
(参考価格: 20,000円〜)
あの一流スポーツ選手が愛用するオークリーには、実は「Industrial(インダストリアル)」という産業用・軍用のラインナップが存在します。
- ここが凄い: 散弾銃の弾すら弾き返すと言われる圧倒的な耐久性(ANSI Z87.1適合)。そして何より、「オークリーをつけて仕事をしている」という高揚感があります。
- 注意点: 高価なので、紛失や盗難には十分注意が必要です。
現場のプロの一言 視界の歪みが全くなく、長時間かけていても疲れません。「一流の職人は道具にもこだわる」というプライドを満たしてくれる逸品です。これをかけていると、他の職人から「おっ、いいの持ってるね」と声をかけられます。
5. 【日本人のための最適解】SWANS(山本光学) 偏光セーフティグラス
(参考価格: 3,000円〜1,5000円)
最後にご紹介するのは、日本の産業安全を支えるトップメーカー、山本光学の『SWANS』です。 「海外製のサングラスは、鼻が浮いたり頬に当たったりして合わない…」という経験はありませんか? これは日本人の骨格に特化した設計なので、フィット感が別次元です。
- ここが凄い:
- ペトロイドレンズ: ポリカーボネートをさらに強化した独自のレンズで、とにかく傷に強い。粉塵の多い現場でも長く使えます。
- 乱反射をカット: 偏光機能が優秀なので、現場への運転中はもちろん、雨天時の路面確認や、水路の水面状況を確認する際に圧倒的な視認性を発揮します。
- おすすめのモデル:
SN-770やウォーリアー(WARRIOR)シリーズなど。
現場のプロの一言 「やっぱり日本製」と言わせる安心感があります。長時間かけていてもこめかみが痛くならず、ズレてこない。運転から現場確認まで、ストレスなく使える「万能選手」です。
【体験談】下水道現場で実際に使ってみてよかった点・悪かった点

私はこれまで、裸眼で作業したり、安物のサングラスを試したりと、数々の失敗を繰り返してきました。 現在は「調光レンズの保護メガネ」をメインに使っていますが、実際に現場で使い続けて感じた「リアルな本音」を包み隠さずお話しします。
✅ ここが良かった!導入して感じたメリット

1. 帰宅後の「目の奥の痛み」が消えた これが最大のメリットです。 以前は、暗いマンホール内から地上に出た時の強烈な日差しや、コンクリートの照り返しで、夕方には目が充血し、頭痛がすることもありました。 しっかりした保護メガネを導入してからは、目の疲労感が劇的に減り、仕事終わりのビールが美味しくなりました。目は「むき出しの臓器」だということを痛感します。
2. 「汚水ハネ」への恐怖心がなくなった 高圧洗浄機を使う時や、管内の調査中、予期せぬ水ハネや泥ハネがあります。 裸眼だと「目に入ったらどうしよう(感染症が怖い)」というストレスが常にありましたが、保護メガネがあれば物理的にガードされているため、作業への集中力が段違いに上がります。
3. 「仕事モード」へのスイッチが入る ヘルメットの顎紐を締めるのと同じで、保護メガネをかけると「よし、やるぞ」というスイッチが入ります。現場で「プロの顔」になれるアイテムです。
❌ ここが微妙…注意すべきデメリット

1. 夏場は「逆パンダ」に日焼けする これは現場仕事の宿命ですが…(笑)。 長時間かけていると、目の周りだけ白く、顔の他の部分が黒く焼けてしまい、サングラスを外すと少し間抜けな顔になります。気になる方は、日焼け止めとの併用が必須です。
2. 偏光レンズは「スマホ・図面」が見えない 以前、良かれと思って「偏光レンズ」を買った時の失敗談です。 水面のギラつきは消えるのですが、スマホの画面や、ガス検知器、流量計の液晶画面が真っ暗になって見えなくなりました。 画面を見るたびにメガネをずらす必要があり、非常に面倒でした。現場用なら「偏光なし」の方が使い勝手がいい場合が多いです。
3. 結局、傷はつく(消耗品と割り切る心が必要) いくら「防傷コーティング」と書いてあっても、現場の砂埃がついたままウエスでゴシゴシ拭けば、一発で傷が入ります。 高級なオークリーであっても、現場で使えば傷はつきます。「1〜2年使えれば御の字」くらいの気持ちで、消耗品として割り切るのが精神衛生上よいでしょう。
💡 長持ちさせるための「プロのメンテナンス術」

最後に、私が実践しているメンテナンス方法を共有します。
- 絶対に乾拭きしない: 現場の粉塵は「ヤスリ」と同じです。
- まずは水で流す: ペットボトルの水や水道で、表面の砂埃を流します。
- 優しく拭き取る: ティッシュではなく、メガネ拭きや柔らかい布で水分を吸い取ります。
これだけで、レンズの寿命は2倍以上に伸びます。
現場で浮かないための「見た目」のコツ

「あいつ、現場に遊びに来てるのか?」 そんな風に後ろ指を指されないためには、アイテム選びとちょっとした気遣いが重要です。
1. 「ミラーレンズ」は避けるのが無難

鏡のように反射する「ミラーレンズ」は、相手から自分の目が見えません。 これは威圧感を与えてしまうため、現場、特に施主様や元請けと顔を合わせる可能性がある場合は避けたほうが無難です。
- NG: ギラギラのレッドやブルーのミラー(威圧感MAX)
- OK: 薄めのスモーク、クリア、または目が透けて見える程度の濃さ
相手から「表情が読み取れる」ことは、現場のコミュニケーションにおいて安心感に繋がります。
2. フレームは「ヘルメットの色」に合わせる

派手な蛍光イエローや白のフレームは、どうしても「スポーツ感(レジャー感)」が出てしまいます。 現場で馴染む鉄板カラーは、以下の3色です。
- マットブラック(つや消し黒)
- グレー
- ネイビー
これらはヘルメットや作業着(ニッカポッカやカーゴパンツ)との相性が良く、「仕事道具」として自然に見えます。
3. 【最重要】挨拶の時だけは外す

これが一番の「身を守る術」です。 朝礼の時、監督への挨拶、近隣住民の方とすれ違う時。この一瞬だけサッとメガネを外して(あるいはおでこに乗せて)、「裸眼で目を見て挨拶」をしてください。
「作業中は目を守るために装備しているが、礼儀はわきまえている」 このメリハリを見せるだけで、周囲の印象は「生意気な奴」から「安全意識の高いしっかりした職人」へとガラリと変わります。
まとめ:現場のサングラスは「粋がり」ではなく「プロの安全管理」

今回は、現場仕事におけるサングラス(保護メガネ)の選び方とおすすめを紹介しました。
記事のポイントをもう一度振り返ります。
- 普通のサングラスはNG: 割れて失明するリスクがある。「ANSI Z87.1」や「JIS規格」適合品を選ぶこと。
- 曇り止めは必須: 現場の湿気やマスクに勝てる強力なコーティングが必要。
- マナーを守る: 挨拶の時は外すなど、メリハリをつければ「生意気」とは言われない。
目は、職人にとって「一生モノの道具」です。 腰道具や電動工具には何万円もかけるのに、唯一無二の「自分の目」を守るための数千円をケチってはいけません。万が一失明や怪我をしてしまってからでは、取り返しがつかないからです。
「どれにしようか迷う…」という方は、まずはここから!
もし迷っているなら、まずは『Bolle Safety(ボレーセーフティ)』を試してみてください。 1,000円〜2,000円という安さで、世界最高峰の曇り止めと強度を体験できます。「なんだ、これで十分じゃん!」ときっと思えるはずです。
そして、私と同じように「暗い場所と明るい場所」を行き来する現場の方は、少し奮発してでも『UVEXの調光モデル』を選んでください。あの「掛け外しのストレス」から解放される快適さは、一度味わうと戻れません。
明日からも、クリアな視界で、ご安全に!



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